Life-ism

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ちょっと物足りないぐらいがベスト

私の周りには、私の母と弟を含め、双極性障害(bipolar disorder)という脳の障害/個性を持つ人が何人かいます。双極性障害とは、とても大雑把に説明すると、極端に気分が落ちているときと、極端に気分が上がっているときがあって、その上がり下がりのせいで社会生活に支障をきたしている状態です。

私自身も、おそらくその遺伝的要素を持っていて、気分の波を自覚することが多いのですが、動けなくなるようなうつ状態も、周囲に迷惑をかけるような躁状態も経験なくここまで生きてこられたので、障害の程度がごく軽いのか、あるいはセルフコントロールが功を奏しているのかのいずれかだろうと思います。

私の周りで双極性障害によって生活に支障をきたしている人たちを見ていると、気分が落ちているとき(うつ状態)にはなんとかして気分を上げたくて治療に頼るのに、気分が上がっているとき(躁状態)には気分が上がるがままにして、場合によっては治療から遠ざかってしまうのです。

雪に閉ざされた長い冬のようなうつ状態からようやく抜け出し、気分が上がった状態(躁状態)がしばらく続くと、「自分は病気を克服できたのにちがいない! このまま一生気分良く生きていきたい!」と思うようです。気分が良いのだから、薬なんか飲みたくない。薬を飲んだら、せっかくの良い気分を抑えることになるかもしれない。自分はもう大丈夫。治療から離れよう……。そんなふうに考えるようなのです。

けれど、悲しいかな生まれつきの脳の個性は変わらないので、いずれまた何かをきっかけに気分が落ちて、うつ状態になるときが来ます。毎日がハッピーでキラキラして幸福を満喫できる躁状態から、地獄のようなうつ状態に落ちるその落差は、当事者でない私の想像をはるかに超えるつらさだと思います。

そのため、双極性障害の治療では「下がりすぎず、上がりすぎない状態を維持する」を目標とします。私が読んだ本では、ごくごく軽いうつ状態が続いているぐらいがベストなのだそうです。たまに気分が良い日もあるけど、軽いストレスと疲れを感じる日が大半、という感じでしょうか。

つまり、毎日がハッピーでキラキラして幸福を満喫できる状態が続いているということは、双極性障害を持つ人にとっては「コントロールがうまくいっていない状態」なのです。もし、このときに治療から離れると、いずれ来る「下がりすぎ」を防ぐことができません。

なにごとも、ほどほどで良く、ちょっと物足りないぐらいがベストなのです。